東宝/カラー・東宝スコープ/104分
昭和42年7月22日公開
(同時上映「長編怪獣映画 ウルトラマン」)
(解説)
──強力な核兵器で世界の覇権を握ろうともくろむ東南アジア某国は、諜報員マダム・ピラニヤを通じて国際的お尋ね者の科学者ドクター・フーに資金を提供し、北極の地下に大量に眠る核物質エレメントXを手に入れようとしていた。フーは国連科学委員会のカール・ネルソンと野村次郎の研究を盗んでキングコングそっくりの巨大ロボット、メカニ・コングを造りエレメントXの採掘に取りかかるが、周囲の磁気に阻まれて失敗してしまう。
一方、ネルソン司令官、野村三佐、看護婦のスーザン・ワトソンらが乗る潜水調査艇エクスプロアー号は南ジャワ海を航行中、海底岩壁の崩落に巻き込まれ、修理のために立ち寄ったモンド島で伝説の巨猿キングコングに遭遇する。それを知ったフーはキングコングと3人を拉致して採掘作業に利用しようとするのだが……。
フランケンシュタイン二部作と同じく怪獣の大きさを従来の半分(20〜30メートル)に設定し、原点回帰のリアル志向を打ち出したアダルトなムードが横溢する一編。当時放映されたアメリカのテレビアニメ『キングコング』の設定を一部受け継ぎ、世界征服を企むマッド・サイエンティスト、美貌の女スパイが暗躍する007シリーズのような無国籍アクションと怪獣映画を合体させた異色作に仕上がっている。ことに悪役ドクター・フーとマダム・ピラニヤの屈折した人物造型が秀逸で、2人に扮した天本英世、浜美枝の演技対決は本作の大きな見どころだ。
また東宝創立35周年記念映画の1本として製作されただけに、国連の原子力潜水艦エクスプロアー号やフーの双胴輸送船といった大スケールのモデルと自走式のラジコン戦車等を駆使したミニチュアワーク、円谷英二が本家『キング・コング』にオマージュを捧げたコングとゴロザウルスの格闘シーン、東京タワーで繰り広げられるクライマックスのコングVSメカニ・コング戦など、特撮の見せ場も盛りだくさんである。
北極のセットで東宝版キングコング(二代目)、モンド島に住む肉食の原始恐竜ゴロザウルス、ドクター・フーが造った遠隔操作の電子怪獣メカニ・コングが勢揃いした宣伝スチール。本編ではこのような3体が戦うシーンはないが、いずれも完成度の高い着ぐるみを生かし魅力十分に演出されている
スーザン役のリンダ・ミラーに次郎(宝田明)に抱きつく演技のお手本を見せる本多監督
クライマックス・シーンに登場する東京タワーのセットの上の本多監督とリンダ・ミラー。リンダ・ミラーは日本で活躍していたファッションモデルで、高城丈二・主演のドラマ『七つの顔の男』や深作欣二監督『ガンマー第3号 宇宙大作戦』等の映画にも出演している
完成作品ではカットされたシーンより、マダム・ピラニヤ(浜美枝)に祖国を捨てて一緒に世界を征服しようともちかけるドクター・フー(天本英世)
出演
宝田明
浜美枝
ローズ・リーズン(声=田口計)
リンダ・ミラー(声=山東昭子)
天本英世
北竜二
田島義文
堺左千夫
沢村いき雄
黒部進
伊吹徹
桐野洋雄
草川直也
鈴木和夫
岡部正
広瀬正一
中島春雄
関田裕
他
出動した防衛隊員や野次馬がひしめく大群衆シーンの夜間ロケの一コマ。ネルソン役のローズ・リーズン、警備本部長を演じた北竜二らと
冒頭シーンのエクスプロアー号司令室のセットで打ち合わせ中の本多監督と主演の3人、通訳を務めたヘンリー・大川
エレメントXの反応を確認するフーとピラニヤ、フーの助手たち。シーンごとに替わるピラニヤやスーザンの衣装、フー一味の制服などコスチュームデザインのセンスにも注目