東宝/カラー・シネマスコープ/84分
昭和45年12月20日公開
(同時上映「巨人の星 宿命の対決」「アタックNo.1 涙の回転レシーブ」「みにくいあひるの子」)
(解説)
──行方不明の木星探査ロケット・ヘリオス7号が太平洋上に落下するのを目撃したカメラマンの工藤は、リゾート開発会社の宣伝部員・アヤ子から依頼され、生物学者の宮博士や怪しげな風俗研究家・小畑とともに落下海域に近いセルジオ島を訪れる。
一行はそこで次々に現れるイカ、カニ、カメが変異した巨大怪獣と遭遇。それは他の生物に乗り移って意のままに操るアメーバ状の宇宙生命体による地球侵略の始まりだった。工藤たちは島民と力を合わせ、旧日本軍の武器を使って怪獣に立ち向かうが……。
円谷英二亡き後の東宝スタッフが、怪獣ブームが下火となっていた時代にあえて新路線を模索した意欲作。新規デザインのオリジナル怪獣を3体も登場させ、孤島を舞台に人間たちが知恵と工夫で侵略者と戦うシンプルなドラマ構造など、怪獣映画・SF映画の初心に還ったともいえる内容で、本多監督の演出も水中撮影シーンや怪獣と人間の距離感の表現に原点回帰の狙いが見られる。
また、悪役の小畑が最期に人間の誇りを取り戻し、自分を犠牲にして宇宙生物を倒すクライマックスには、本多監督が描き続けた「人間らしさの根源は自由な心にある」という信念と「自由を奪われることの傷みと憤り」が見事に集約されている。
ひな祭りの衣装を着けたアヤ子役の高橋厚子と斉藤宣丈(島の青年・リコ役)の宣伝スチール
久保明(工藤)、土屋嘉男(宮博士)に小畑役の佐原健二を加え、キャストは本多作品の常連がそろい踏み
カミナリイカが巨大化したゲゾラの合成スチール。着ぐるみの弱点を脚部の処理で補った秀逸な造型である
カルイシガニの怪獣ガニメとマタマタガメのカメーバ。首が伸縮するカメーバのギミックが効果を挙げている
出演
久保明
高橋厚子
土屋嘉男
佐原健二
小林夕岐子
斎藤宣丈
藤木悠
堺左千夫
当銀長太郎
中村哲
杉原優子
大前亘
権藤幸彦
加藤茂雄
緒方燐作
中島春雄
中村晴吉
他
本多監督とスタッフの撮影中の一コマ。本編・特撮を分けない一班体制で撮影された
久保明と高橋厚子を演出中。高橋は「お嫁においで」「怪獣総進撃」にも出演している。下はロケ先での記念写真