東宝/モノクロ・スタンダード/92分
昭和31年1月22日公開
(同時上映「乱菊物語」)
(解説)
──熊本の高校生・小泉浩子は、母親の死をきっかけに東京でそば屋をしている伯母を頼って上京。転校先の清花高校で熊本弁で挨拶したことから「ばってんさん」というあだ名で呼ばれるようになる。担任の篠原先生が顧問をつとめる卓球部に入部し頭角を現していく浩子だったが、コーチの大学生・堀田と顔見知りだったためにエースである長谷川華子の反感を買い、さらに差出人不明の堀田宛のラブレターが原因で他の部員たちとの関係までギクシャクしてしまう。
しかし浩子の素朴さを好ましく思う伯母のかつ子や篠原、堀田、クラスメートの沢崎邦子たちは、それぞれの立場から彼女を励まし支えようとする。やがて関東高校卓球大会が近づいたある日、浩子はボートの事故でケガをした華子を見舞った帰り道で邦子の意外な姿に出会う……。
「母子草」「乙女の性典」など多くの映画化作品をもつ作家、小糸のぶの原作による青春学園もの。
地方から転校してきたヒロインをめぐる女子高生たちのささやかな葛藤と和解を、担任教師やコーチの男性の視点を中心に描いているが、人物設定やセリフ、ストーリー展開はほぼ原作に忠実。その中で「続思春期」でも好演していた宮桂子が演じる沢崎邦子の翳りのあるキャラクターの肉付けや、彼女と堀田の友人・馬場の交流、長谷川華子の家族をクローズアップしてドラマに膨らみをもたせた脚本・演出の妙に注目したい。
演出中の本多監督と邦子役の宮桂子。邦子は家計を支えるためにアルバイトで無理をして倒れてしまう
多摩川でボート遊びをしていた浩子や華子たちが事故に遭うシーンのロケ風景
かつ子のそば屋「やぶ新」のセットにて。主演の青山京子は本多監督の「続思春期」「恋化粧」や「潮騒」「生きものの記録」「サザエさん」などのほか、松竹の時代劇でも活躍。日活スター・小林旭と結婚して引退した
堀田の友人、馬場次郎左衞門役の太刀川洋一と。のちに太刀川寛と改名し「妖星ゴラス」「マタンゴ」などに出演。東宝の文芸映画やサラリーマンもの、「蜘蛛巣城」「用心棒」ほか黒澤作品でもおなじみ
出演
青山京子
山田真二
佐野周二
太刀川洋一
宮桂子
清川虹子
志村喬
森啓子
河美智子
井上大助
富田仲次郎
沢村貞子
一の宮あつ子
堤康久
他
長谷川家の応接間での撮影。本多監督と華子の両親を演じた志村喬、一の宮あつ子。右は華子役の森啓子と青山京子
邦子に代わって牛乳配達を始めた浩子(青山京子)が篠原先生を訪ねてきて眠ってしまうシーンの演出中
若い樹のように伸び盛りの生徒たちを見守る篠原先生役の佐野周二、部員たちのあこがれ・堀田卓矢役の山田真二と