「若き魂に望む」 演出者の言葉 本多猪四郎 「思春期」では環境がどのような心理的な影響を与えるかという問題を提起した。今度の作品で私は一つの事件をめぐって思春期の子女の心の中に惹きおこされる内面を描いてみたい。未完成の魂が心ない大人の一言によってどんなに深い衝動を受けるか、そしてどんなに悩まされる か、また不測にあらわれた事態に世間体だけを考えての独善的な解決をする大人のエゴイズムを鋭く衝いて、はんとうの意味の解決は子女の良識によってのみもたらされることを強く訴えたい。 思春期こそ人生の最 大の幸福だからーー。 (「続思春期」プレスシートより) (解説) 本多監督と同じ山本嘉次郎門下の丸山誠治監督による「思春期」(52年)の続編として企画された青春映画。 舞台は山間の小さな町。県会議員の娘・玲子、神主の息子・桂太、小さなバーを営む母親と二人暮らしの玉枝ら高校の仲良しグループは、読書会を作って哲学の勉強をしていたが、学校側からにらまれ解散させられてしまう。さらに、桂太と玲子が二人きりで山に行ったことが誤解され町中に噂が広まった。両家の親や校長はスキャンダルを打ち消すため、二人を婚約させることにしたが、それは余計に玲子と桂太を苦しめる結果に……。 勝手な思惑で事態の収拾を図る大人の論理、規範に合わない者を排除しようとする不条理な社会の力学に対して、あくまで誠実に、理性をもって向き合う若者たちの姿が感動的な一編。 ポスターや宣伝用スチールのような扇情的なシーンは一切なく、モノクロ作品にも関わらず稲穂や木々の緑といった鮮やかな色彩を感じさせる、みずみずしい映画に仕上がっている。 キャストでは、さばけた教師役の小林桂樹をはじめ、少年時代の久保明、石井伊吉(毒蝮三太夫)、「ゴジラ」にも出演している鈴木豊明らが好演。若き日の塩沢とき、大村千吉、向井淳一郎など東宝バイプレーヤー総出演も本多作品のファンには楽しい見どころだ。 また、公募で選ばれた演劇部所属の現役高校生・宮桂子の新人とは思えない陰影のある演技が印象的。彼女の出演に合わせてシナリオが改訂され、本多監督らしいWヒロインの構図、女性映画的な側面が強くなった点も特筆される。