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(1) 本多猪四郎監督作品の出演作の名で印象に残っている作品とその理由。

各作品、夫々にいろいろな思い出があり印象に残っている。
一つの作品を選ぶのはむずかしい。
あえて挙げるのであれば「マタンゴ」(63年)か。
7人の男女がヨットで遭難し、無人島にたどり着き、食料不足な状況下で人間のエゴ、欲望が入り乱れるなか、無人島に生えている、食べてはいけないマタンゴというキノコを全員が食べて死んでゆく。
学者役の私だけが日本に生還するのだが、なぜかキノコを食べた証が顔に表れているラストカットが恐ろしい。
脚本の良さと丁寧な演出は勿論のこと、製作費をかけた美術、7人の俳優のグループ演技、面白く楽しく演じがいのある作品だった。

(2) 本多猪四郎監督作品の撮影中のエピソード。

「怪獣総進撃」(68年)の宇宙ロケットムーンライトSY-3の船内撮影の時、艇長の私が操縦するハンドルレバーの動きと並んで、同じように動く副操縦士のハンドルレバーの動きをスタッフが私の動きを見ながら手動で左、右と合わせるのだが、私の動きからわずかに遅れてしまうのは当然なことで何度、撮りなおしをしたことか。
超科学的なことの撮影なのにと思うと可笑しくて撮影現場で大笑いになった。

(3) 心に残る本多監督との思い出。本多監督にまつわる人柄について。

映画監督は撮影現場で、俳優やスタッフに対して自分の思うイメージに合わないと怒ったり、どなったりする。(黒澤明監督は時折そうなりますが。。。)
本多監督が怒ったり、どなったりしたことは見たことがない。優しく温厚で紳士的な人柄は俳優にとってうれしいことだ。
地方のロケーションでは、スタッフ、キャストの合同食事会、宴会はままあるが、撮影所で一日の仕事が終わって自宅に押しかけ飲み会が始まるのは本多監督のご自宅がもっとも多かった。(黒澤監督宅も多かった。)
宴会もたけなわになると、東北出身の本多監督はスバラシイ声で民謡を謡われる。毎年のバースディ宴会。奥様、お嬢さんの接待も優しく何とも楽しい思い出だ。

ホームページ開設、素晴らしいことだと思います。06年サンフランシスコへ東宝SFフィルムイベントへ参加したとき、海外の熱いファンの勢いに圧倒されました。
日本国内はもとより全世界に向けて東宝が誇るSF映画の情報が本多監督の作品を通じて広がることを期待します。
久保明